書評
「市中感染症診療の考え方と進め方―IDATEN感染症セミナー」―IDATENセミナーテキスト編集委員会 編
後藤 元
1
1杏林大学・呼吸器内科学
pp.1057
発行日 2009年12月20日
Published Date 2009/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101865
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79歳の女性。認知症があり,自宅で半ば寝たきりで過ごしていた。2,3日前から元気がなくなり,食欲も低下してきた。37度台前半ではあるが微熱が出現している。胸部X線を撮ると右下肺野の透過性が低下しているようにみえる。血液検査では白血球数は4,800であったが,CRPは3.2と軽度ながら上昇していた。とりあえずキノロン系抗菌薬を経口で開始した。3日間使用したが,微熱は相変わらず続き,全身状態も改善がみられなかった。このため入院とし,抗菌薬をカルバペネムに変更した。しかし,1週間経っても状態は同様であった。喀痰検査を行ってみたところ,Stenotrophomonas maltophiliaとMRSAが検出された。薬剤感受性成績をみるといずれもカルバペネム耐性である。そうか,だからカルバペネムは効かないのだ。この菌種を狙って抗菌薬を変更しようと今,考えているあなたにとって,本書は大きな助けとなってくれるであろう。
感染症は,どの診療科であっても日常臨床の中で否応なしに対応を迫られる頻度の高い疾患である。しかし,現在わが国で感染症を専門としている医師は多くはない。ありていにいえば少ない。実際このような症例に遭遇したとき,的確なアドバイスを与えてくれる上級医がそばにいてくれないという状況は少なくない。
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