書評
「問題解決型 救急初期検査」―田中和豊 著
岩田 充永
1
1名古屋掖済会病院・救命救急センター
pp.849
発行日 2008年10月20日
Published Date 2008/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101582
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指導体制が十分ではない救急室(ER)で診療を始めたばかりの研修医の皆さんは,「とりあえず検査をして,異常値あるいは異常所見が見つかったらそこから病気を探していこう」という診療をしているのではないでしょうか? 田中和豊先生は,この診療方法のことを「当たるも八卦,当たらぬも八卦診断法」と紹介され,「検査値に異常がない=正常」あるいは「検査値が異常=診断が確定」と短絡的に考えてしまうことに警鐘を鳴らしておられます。
実際に,「食後に胃の辺りが気持ち悪かった」という訴えでERを受診し,血液検査でγ-GTPが高値であったので腹部エコーをすると胆石が見つかった。それで「ああ,今回の痛みは胆石発作ですね」と安易に診断して帰宅させようとしたところ,実は不安定狭心症であった…など,恐ろしい事件が全国のERで発生しています。最近の国内外の報告では,歩いてERを受診したのに重篤な疾患(killer disease)である割合が0.3%程度とされており,研修医の皆さんが1回の救急当直で歩いて受診する救急患者を5人診察すると仮定すると,月に5回当直を行った場合,年間に300人の救急患者を診察することになり,年間に1人はそのような症例に遭遇することになります。
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