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森嶋隆文氏らの綜説「亜鉛と皮膚疾患--腸性肢端皮膚炎を中心として--」(本誌,32(4);259,1978)を拝読した.今まで比較的注目されていなかった亜鉛が,種種の皮膚疾患と密接な関係にあり,いくつかの疾患に亜鉛の欠乏症がみられることが明らかになってきたことは興味深いことである.このなかで腸性肢端皮膚炎はもっとも注目される疾患である.本症は,肢端部,開口部の乾癬様,膿痂疹様病変,脱毛,下痢などの胃腸症状を主症状とし,乳児期とくに離乳期に多く発病し,今までキノホルムが唯一の有効な療法であった.しかし近年スモン病とキノホルムとの因果関係が医学的,社会的にとりあげられ論議されるようになり,キノホルムに代る新しい療法として亜鉛療法が試みられるようになり,本邦でも森嶋らによってすでに報告されたところである.
筆者も,スモン病を合併した腸性肢端皮膚炎の長期観察例を経験し昨年の日本皮膚科学会総会で報告した.症例は現在22歳の男子で生後6カ月頃に発病している.昭和33年(3歳)当科を受診し,本症の診断のもとにキノホルムを投与され(500mg/日→1000mg/日),症状が寛解した(皮膚科最近の進歩,Ⅲ,276頁,昭35;皮膚臨床,5;559,昭38の症例1).以後昭和51年1月まで本剤を服用していた(維持量250mg/日).昭和48年新潟大,眼科で視神経萎縮,神経内科でスモン病の診断を受けた.キノホルムの入手が困難となり,本剤の内服を中止したところ症状が急激に増悪し,昭和51年3月当科へ入院した.入院時,血清亜鉛値(原子吸光法,37μg/dl)の低下がみられたので,亜鉛療法(400mg/日,硫酸亜鉛)を開始し,数週で皮疹の著しい改善と血清亜鉛値の上昇をみた.それ以後,現在に至るまで血清亜鉛値を参考にして,硫酸亜鉛を1日量100〜600mgをときどき投与している.この間血清亜鉛値が上昇したとき(110μg/dl以上)は休薬としている.
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