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1887年UnnaによりEczema vulgareとは異なる疾患として記載されたEczema seborrh-oicumは以来,諸家により名称,病型,分類,病因などに関して種々の見解が提唱されており,いまだ一定の帰結に達したとはいい難い。現在,本邦では名称として脂漏性湿疹と脂漏性皮膚炎の両者が広く用いられているが,Gansらは本症の病因が明らかにされないうちはMorbus Unnaの名称を用いる方が妥当であるとしている。ただし,本症は病因が完全に解明されないままに,近年次第に減少の傾向をみせている。すなわち,九大皮膚科60年(明治39年〜昭和40年)の湿疹・皮膚炎群の統計1)によれば,本症の外来患者総数に対する頻度は明治39年より昭和5年までの25年間に5〜10%を上下する大きな山があつたが,以後急減して0.5〜1.0%の低率となつている。一方,弘前大最近20年間のそれでは図1に示すように,昭和28年の3.05%をピークとして比較的険わしい起伏を示しながらも次第に減少していることが窺われる。
本症の典型は成人において,いわゆる脂漏部位に境界明瞭な紅斑と帯黄色,脂性鱗屑(鱗痂)の発現することが特徴とされている。すなわち,被髪頭部に汚黄色で比較的厚い鱗痂およびこれを中心とする境界鮮明な発赤が生じ,同様の変化が髪際を越えて下行性に眉毛部,鼻唇溝,耳囲,外耳道におよび,さらに腋窩,前胸,肩胛問(汗溝),臍窩,陰股,肛囲にも現われる。自覚的に掻痒は軽度であり,全体として乾燥性であるが,軽度の湿潤を示すことがあり,間擦部では間擦疹の形をとる。組織学的には不全角化,表皮肥厚,軽度の海綿状態,真皮の軽度の浮腫,血管囲性細胞浸潤,毛包角化などが認められ,多くの点で普通の湿疹あるいは乾癬と類似せる所見がみられるが,小水疱形成が病巣の主要素となることはない。本症は時として乾癬との鑑別に苦しむことがあるが,真皮乳頭における血管の態度が有力な指標と考えられる。すなわち,乾癬では真皮乳頭体に入る血管が特有の迂曲・拡張・蛇行を示すのに対して,脂漏性湿疹のそれはそのような所見を呈さず,正常に近い像であり(針生2)),乳頭下血管網においてわずかに拡張・蛇行・屈曲がみられる(最上3))。なお,乾癬の年次消長は,われわれの場合,本症と対照的に近年増加の傾向にあるといえる(図1)。
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