特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅲ.めまい診療NAVI
2.良性発作性頭位めまい症
中山 明峰
1
,
栗山 真一
1
1名古屋市立大学耳鼻咽喉科
pp.77-81
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102137
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Ⅰ 歴史的背景
良性発作性頭位めまい症(BPPV)はdf1921年Barany1)により初めての症例が報告され,1952年,Dix2)によって診断基準(表1:眼振の性質が潜伏期をもち,向地性で回旋性,一過性,反復性をもちながら疲労性を示す)となる報告がなされた。この病態は近年までクプラに耳石が付着したクプラ結石症(cupulolithiasis)3)として解釈された。つまり卵形囊などで脱落した耳石がすぐ横にある半規管クプラに付着するものだと考えられた(図1a)。しかしこの説ではDix2)が観察した症状と矛盾した点が生じる。こうした問題点を指摘しながら1979年に耳石の塊が半規管を通ってクプラの耳石膜と反対側に浮遊する半規管結石症説(canalithiasis)4)が出現し(図1b),この説はDixが報告した症状とより矛盾しない。この頃より半規管結石症説に基づいて考えられたEpley法5,6)が報告され,この治療法は世界的に支持された。Epley法の出現により,これまで認識されたBPPVは後半規管結石症であると確認された。しかしながら,BPPVの治療に対する研究がなされるにつれ,クプラ結石症,また,いろいろな半規管に病巣がある複雑型が報告されるようになった7)。
この章では,BPPVの複雑な病態を鑑別する方法および治療について述べる。
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