特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の検査マニュアル―方法・結果とその解釈
Ⅰ.聴覚検査
5.耳管機能検査
大島 猛史
1
1東北大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野
pp.35-40
発行日 2010年4月30日
Published Date 2010/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101588
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Ⅰ はじめに
耳管は鼓室と上咽頭を結ぶ長さ約3.5cmの管性構造物で,中耳の圧平衡・排泄・防御などの機能を有している。これは中耳の恒常性維持に重要であり,この障害により中耳病態が生じ,また,耳管に起因する特有の症状が患者を悩ますこととなる。そのため,耳管機能の評価は耳管・中耳病態の把握に重要である。現在,耳管機能検査は保険適応となっているが,聴力検査,ティンパノメトリーに比べると広く普及しているとはいえない。大学病院でさえ7割未満の施設にしか耳管機能検査機器が導入されていない1)。また,全国の病院の耳鼻咽喉科医に対するアンケート調査では,耳管開放症を疑ったときに行う検査として耳管機能検査は『必ず行う』が2割未満で,『行わない』が6割超であった2)。Shambaugh3)は,耳管開放症は患者の耳と自分の耳をチューブでつなぎ,聴診すれば容易に診断されると記載しているが,実際は診断に難渋する例も少なくなく,耳管機能検査装置はそれを打開するには有用であろう。普及を阻む要因の1つには検査結果の解釈や診断基準が不明確な点が挙げられる。ここでは,耳管機能検査法の施行方法,結果の解釈などについて概説する。
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