特集 頭頸部再建外科―日常臨床から理論まで
Ⅰ.再建材料とその採取法
3.大胸筋皮弁
加藤 孝邦
1
,
波多野 篤
1
,
石田 勝大
2
,
斎藤 孝夫
3
1東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科
2東京慈恵会医科大学形成外科
3同愛記念病院耳鼻咽喉科
pp.35-43
発行日 2009年4月30日
Published Date 2009/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101415
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Ⅰ はじめに
頭頸部癌の再建術は局所皮弁の時代にBakamjian1)が1965年に報告したDP皮弁により大きく発展し,現在も有用な皮弁として用いられている。その後1979年,Ariyan2)の大胸筋皮弁の発表により頭頸部再建は大きく変化していった。皮弁の血行の研究により安定した皮弁を選択し,以前よりあった血管吻合術手技を用いて遊離皮弁で再建するようになり,有茎筋皮弁の利用は著しく減少した。現在では頭頸部癌の術後再建の第一選択は遊離皮弁となった。しかし,再手術例などで再建に用いる移植床血管が確保できない症例,放射線根治照射や同時化学療法併用照射後の再発症例,そのほか合併症などにより遊離皮弁の適応のない症例,複数の皮弁を用いなければならないが,キメラ再建のできない症例など多くの症例で現在も有茎皮弁が用いられている。そのなかで大胸筋皮弁が最も有用な有茎筋皮弁として頭頸部領域の再建術に今でも多く用いられている。大胸筋皮弁は安定した皮弁で容易に皮弁を挙上することができ,遊離皮弁のような特別な訓練を必要としない手術手技である。頭頸部癌の再建としては口腔,中・下咽頭領域および頸部の再建などの広い範囲の再建に用いられている。耳鼻咽喉科医なら容易に使える皮弁であるのでその概要を述べる。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.