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特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―症例報告発表・論文執筆のコツ,注意点
1.学会発表の方法・仕方(口演,ポスター)
1.Performance of oral or poster presentation at academic meeting
佐野 千晶
1
,
川内 秀之
1
Chiaki Sano
1
1島根大学医学部耳鼻咽喉科
pp.25-32
発行日 2008年1月20日
Published Date 2008/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101190
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Ⅰ.はじめに
日々の日常診療のなかで,ふとした疑問が湧いたり診断・治療に苦慮したときに,教科書を読み,文献検索を行い,上級医に報告・相談し,よく考えることを習慣づけることは,臨床医として成長するために大変重要なことである。症例から医学知識へのフィードバックをかける習慣がなければ,診察している患者数がいくら多くても,診療レベルの質の向上は望めない。考える習慣が身についてくると,多くの症例のなかから稀な症例に出会った場合,診断や治療に苦慮した場合,予想外の経過をとった場合に,その症例が学会報告に適当であるかどうかやどのような問題を解明しておけばよいかが判断できるようになる。
学会発表の経験を積むと,それなりに自信がついてくるものである。その経験と好奇心を常にもって仕事に取り組むことが肝要である。われわれは日常診療を,多忙ゆえの惰性に流されないように気をつけながら,好奇心を働かせて何かを学ぼうとして医学の認識を深める糧としなくてはならない。
学会発表の経験を積むことがなぜ大切かという質問に対する解答の1つは,臨床医の『形に残る仕事』の第一歩といえるからである。診療活動は,自己満足,サービス,収入源であるだけではない。世間に向けて自分の考えを情報として発信し,業績としてとりまとめてこそ,診療経験,発想や考察が医学へと進化する。実際に学会発表を行い,発表内容を論文化できると同時に,周囲が仕事を評価してくれることも相俟って,研究費の獲得,キャリアアップへと繋がっていく場合が多い。さらに,良質な発表・論文というものは,引用され後世に引き継がれていくものである。
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