特集 上気道アレルギーを診る
12.臨床医に必要なアレルギーの基礎的知識
2)疫学
(3)寄生虫とアレルギー
遠藤 朝彦
1
,
今井 透
2
,
渡辺 直煕
3
,
名和 行文
4
,
本田 靖
5
,
新田 裕史
6
1東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室
2聖路加国際病院耳鼻咽喉科
3東京慈恵会医科大学熱帯医学教室
4宮崎大学医学部感染症学講座寄生虫病分野
5筑波大学体育学系環境保健学
6環境省国立環境研究所地域環境研究グループ都市環境影響評価チーム
pp.213-220
発行日 2004年4月30日
Published Date 2004/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100598
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I.はじめに
耳鼻咽喉科臨床の現場でアレルギー疾患患者の増加がいわれて久しい。今日では,耳鼻咽喉科の多くの施設で外来患者の第1位を占めるといわれている。つい30~40年前,「日本にはアレルギー性鼻炎や花粉症患者は少ない」といわれていたことを考えると隔世の感がある。しかし,われわれの診療圏では,現在もアレルギー性鼻炎や花粉症が増え続けているかというと,かなり以前から微増ないし横ばい状態にあり,急激な増加傾向はみられていない。つまり,少なくとも当地では,過去のある時点において発症者数が急増したことを意味している。事実,東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科(以下,慈恵医大耳鼻科と略)の疫学調査によれば,「昭和40年代から50年代にかけてアレルギー性鼻炎や花粉症が急増した」との調査結果がある1)。では,なぜそれ以前はアレルギー性鼻炎や花粉症が少なかったのか,なぜある時点で急増したのか,その後なぜ増加傾向が鈍化したのか。その理由は今日でも明確にされておらず,素因のほかに大気汚染,住環境,栄養,気候など種々取りざたされている。
その理由の1つに寄生虫感染の問題がある。
われわれは,文部科学省の科学技術振興調整費による「スギ花粉症克服に向けた総合研究」において,研究の一環としてスギ花粉症と寄生虫の問題を取り上げ,既にその一部を報告した2)。本稿では,その後の調査結果を加え,若干の知見も得られたので報告する。
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