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はじめに
現在わが国における40歳以上の緑内障有病率は5%とされ,人口から概算して緑内障患者は約200万人にものぼると推定される。病型別にみてみると,わが国においては正常眼圧緑内障(normal-tension glaucoma:NTG)が,原発開放隅角緑内障(狭義)(primary open-angle glaucoma:POAG)に対し10倍以上の頻度で存在する。とくに原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障に関しては,環境因子の関与や浸透率の低さなどから一般的な病気(common disease)と考えられる。
近年,common diseaseに関しては次々に新しい知見が発表されている。眼科領域では,加齢黄斑変性や落屑症候群,落屑緑内障と強く相関する遺伝子が発表された。加齢黄斑変性は高齢者で発症するが,環境因子と遺伝因子の双方が関連するcommon diseaseと考えられる。2005年に補体H因子(CFH)遺伝子1~3)が,続いて2006年にセリンプロテアーゼであるHTRA1のプロモーター領域の一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)4)が,加齢黄斑変性の発症に大きく相関していることが発表された。2007年には,Thorleifssonら5)によるゲノムワイドな解析により,常染色体15番長腕に位置するLOXL1遺伝子のエクソン1およびイントロン1内に存在する計3つの一塩基多型が,落屑症候群,落屑緑内障と強く相関すると発表された。
このように,近年common diseaseの解析が相次いでなされているが,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障に関してはいまだもって解析は発展途上であり,グレーゾーンが非常に大きい。今回は,緑内障遺伝解析の現状を概観し,将来にかけて越えるべきグレーゾーンを俯瞰してみたい。
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