今月の臨床 初期治療60分—産科救急
呼吸困難と循環不全
19.心筋症
村上 雅義
1
1国立循照器病センター周産期治療科
pp.1406-1408
発行日 1995年10月10日
Published Date 1995/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902306
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心筋症(cardiolnyopathy)は心筋自身が直接障害される疾患である.1980年のWHO/ISFC合同委員会の提案1)によると心筋症とは「原因不明の心筋疾患」と定義され,原因または全身疾患との関連が明らかな心筋疾患を特定心筋疾患(spe—cific heart muscle disease)として区別している(表).これらの疾患をもった妊婦は,すでに厳重な管理が施されていることが多く,本稿でいう産科救急の対象となることは少ない.むしろ産科救急として問題となる心筋症は,いままで心疾患がなかったとされる婦人に,妊娠・出産に際して初めて心不全症状が出現する原因不明の周産期性疾患(peripartal heart disease or peripartum car—diomyopathy)である.そこで本稿では,このタイプの心筋症に絞り対応を述べる.
産褥期にみられる原因不明の心不全の存在は1800年代より知られていたが,1957年にMeadowら2)が本疾患を特殊な心筋疾患と位置づけて以来,その存在がクローズアップされた.タイプとしては,拡張型心筋症と類似の所見を呈する.ただ,本疾患が単一の疾患単位とは考えられないとの立場が一般的である.妊娠・出産に関連する肺塞栓ないしは血栓症によるものという意見もある.発症時期についても本当に発症以前は健康であったのかどうか客観的な評価が行われているとは言いがたい.
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