今月の臨床 体外受精マニュアル—新しく始める人へのアドバイス
体外受精の展開
9.不成功例の検討
久慈 直昭
1
,
小林 俊文
1
,
野澤 志朗
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科
pp.1161-1164
発行日 1995年8月10日
Published Date 1995/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902244
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体外受精に付随する新しい技術が次々に開発され,生殖細胞の生理に関しても新しい知見が数多く得られている.その結果,今まで夢物語であった受精卵の凍結保存,無精子症患者の(非配偶者精子を使用しない)不妊症治療,閉経後の妊娠などが現実のものとなりつつある.
しかしその一方,体外受精自体の妊娠率はこの10年間でほとんど上昇しておらず,上昇しない原因についてもわれわれにわかっていないことは数多い.体外受精を何回くり返しても妊娠に至らない患者で,自然周期に妊娠する例がまれではなく存在し,逆に妊娠分娩を経た症例,あるいは流産や子宮外妊娠後の症例で受精がまったく起こらないことも経験する.不妊症を根絶しようという医学の挑戦を,自然がほほえみながら受け流している様にも思える.
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