今月の臨床 高年婦人科—更年期から老年期へ
一般症状の診かた,とらえ方
12.のぼせ
井口 登美子
1
Tomiko Iguchi
1
1東京女子医科大学産婦人科
pp.930-931
発行日 1992年8月10日
Published Date 1992/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900962
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高齢化社会のなか,更年期の乗り切り方いかんが老年期の生き方に大きな影響を及ぼす。更年期障害には自律神経(血管運動)失調症状と精神症状の強い心因性因子とに大別できる。前者にのぼせ,熱感,皮膚温度上昇,心悸亢進,心拍数増加,冷感,発汗などの症状があり,なかでものぼせが主なる症状である。のぼせ,ほてり,熱感,顔面紅潮,hot flushと呼ばれるのぼせ症状の病態像は,まだ不明の点が多い。
のぼせの発症母地には更年期における内分泌環境の変動が大きく関与している。視床下部および大脳辺縁系には自律神経,内分泌,情動活動などの中枢があり,互いに関連をもち,身体の内外の環境の変化に順応している。しかし卵巣の急激な機能低下に伴うestrogen分泌低下により視床下部の性中枢に影響し,近傍にある自律神経中枢に変調をきたし,血管運動神経障害症状ののぼせをみるようになる。しかし,更年期以外にも,時には閉経前の両側卵巣摘出術後,更年期ごろに増加する高血圧症,狭心症などの動脈硬化性疾患,糖尿病,高脂血症,甲状腺疾患,肥満などによってものぼせ症状は発現する。
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