今月の臨床 産婦人科内科—治療のポイント
妊娠期
13.妊婦の感冒
住吉 好雄
1
Yoshio Sumiyoshi
1
1横浜市愛児センター
pp.1060-1063
発行日 1991年9月10日
Published Date 1991/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900548
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感冒(かぜ)とは,上気道の急性のカタル性炎症と定義され,普通の上気道感染や急性の鼻かぜを指す。症状としては,のどの痛み,くしゃみ,鼻水,涙,頭重,頭痛,時には発熱,寒気,背部痛,全身の倦怠感など,多岐にわたるが,それらはベッドレストだけで1週間以内に軽快することが多い。しかし実際にはそのような軽微な症状で1週間のベッドレストを取ることは不可能であるし,原因はほとんどがウイルスによるものと考えられ著効を示す薬は見当らない。そこで多くは対症療法としていわゆる総合感冒薬(かぜ薬)を服用することが一般的に行われている。しかし対象が妊婦となると母体の疾患を治療するに当り常に母児双方の安全性を考慮した選択が必要となる。即ち妊娠初期では薬剤の催奇形性が問題であり,妊娠中期になると胎児の発育異常や発育抑制が問題になる。また妊娠末期では移行した薬剤の新生児期における安全性などが問題となる。一般に,妊婦では移植片である胎児を拒絶しないためすべての抗原に対する免疫能が低下しているように従来考えられているが,最近の文献によるとそのようなことはなく,絨毛の栄養膜細胞層がHLAGを表面に発現し,この免疫原性のない特殊なMHCクラスⅠ分子が局所で胎児—母体間に発現されているため胎児は拒絶されないと考えられている1)。従って妊婦が特にかぜをひきやすいとか,かぜにかかったら重症になるということはないといえよう。
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