臨床メモ
臍帯の長さと胎動
貝原 学
1
1帝京大学市原病院産婦人科
pp.817
発行日 1986年11月10日
Published Date 1986/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207481
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臍帯の長さは個人差が大きく,3mに達する非常に長いものから,数cmと極めて短いものまで広い範囲にわたって分布している。このように臍帯の長さには他の臓器にはみられないような大きな個体差が存在するが,どうしてこのような差が生じるのであろうか。
臍帯の長さは,胎児の運動の大小と密接な関係があることが動物実験によって明らかにされている。Mo—essingerら1)は,ラットを用いて,羊水過少症を実験的に作成して胎動を抑制したり,胎児にクラーレを直接投与して胎動を消失させたりして胎動が臍帯の長さに及ぼす影響を観察した。その結果,このような動物では臍帯の長さは明らかに短くなることが観察された。また逆に,胎児を子宮腔内から取り出して腹腔内に移すと,臍帯の長さは明らかに延長することが認められた。これらの事実は,臍帯は胎動などの臍帯に加わる力によって,その長さの発育が促進されることを物語っている。
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