特集 手術とFunctional Anatomy
Ⅶ.小骨盤内手術と臓器機能の温存
骨盤底形成術
辻 啓
1,2
Akira Tsuji
1,2
1辻産婦人科
2帝京大学医学部産婦人科学
pp.909-914
発行日 1978年11月10日
Published Date 1978/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205951
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骨盤底形成術Beckenbodenplastik (肛門挙筋縫合術Levatornaht)は,完全子宮脱の場合,下垂臓器(子宮)の下方から「支持装置」1,2)の修復のため,必要欠くべからざる術式である。なぜならば,子宮の下方への完全脱出は,骨盤底の筋肉群(とくにその代表的な肛門挙筋)の弛緩が,一つの大きな原因になって起こるものであるからである1〜6)(ただし,もう一つの主要原因は上方へ吊り上げる基靱帯などの「付着装置」の弛緩による1,2,5〜9)が,ここでは主題からはずれるので省略する)。すなわち,完全子宮脱の場合は,図1—②に示すごとく,正常婦人(図1—①)よりも肛門挙筋が左右へと広く開いて弛緩しているので,これを図1—③のごとく,左右から縫合接着させて,病的に開いた尿生殖裂口(hiatus urogenitalis)を狭く閉じ,腟入口部も狭くしておくことが是非必要である。
また子宮脱はなくても,直腸脱(rectocele)の場合も,骨盤底形成術(挙筋縫合術)のみが唯一の根治療法になる。また多産婦などで,分娩後,腟腔が広くなり過ぎて性交障害を訴える婦人にも,この骨盤底形成術が最も良い治療法となる。
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