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臍帯結紮は原則として臍帯拍動が停止してから行なうことは今日の産科学の常識であり,これは1790年頃にErasmus Darwinが始めて観察したように,胎盤内に貯溜する血液を新生児にできるだけ多く還元してやるためである。事実,C.M.McCueら(J.Pediat.,72:15,1958)によれば,出生直後に結紮した場合と,拍動停止後に結紮した場合では後者の方が40〜50ccの血液が余分に新生児に流れるという。またA.C.Yaoら(Lancet,2:871,1969)が111例の満期正常児で検討した結果では,出生直後の児全血量と胎盤血量の割合は67:33であり,出生後15秒での結紮ではこれが73:27,1分では80:20,3分では87:13で,その後この割合は変化しないという。すなわち出生直後と3分後の結紮では胎児—胎盤系全血量の20%(40〜60cc)におよぶ血液量の差が生ずることになる。
子宮収縮剤の使用により胎盤貯蔵血の新生児への移行が,より効果的に行なわれ得ることはA.C.Yaoら(Lancet,1:380,1968)の検討でも明らかであるが,もう一つの条件として新生児の置かれる位置も考慮されねばならない。A.C.Yaoら(Lancet,2:505,1969)の報告によれば,娩出後30秒での結紮では,児を腟入口部よりも40cm下に置けば入口部の高さに置くよりも40〜60ccの血液が余分に児に流れ込むという(この場合3分後の結紮では差はないが,逆に児を20cm以上腟入口部よりも上方に置く場合には明らかに胎盤からの流入は阻害される)。このことは帝王切開の際に最も考慮されて良いと著者らは述べており,彼らは児を胎盤の高さよりも20cm下に30秒間保つ方法をすすめている。
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