特集 産婦人科
今日の焦点・Ⅱ
染色体異常
松田 正二
1
,
福島 務
1
Shoji Matsuda
1
1北海道大学医学部産婦人科学教室
pp.1017-1021
発行日 1969年12月10日
Published Date 1969/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204126
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はじめに
遺伝は細胞分裂によつて遺伝子geneが娘細胞に移されることによつて行なわれ,生殖細胞においても同様である。これが生殖ならびに遺伝に関する細胞遺伝学理論であるが,最近,発表される人類染色体に関する多くの報告によつて着々と臨床面での裏付けが得られている。すなわち遺伝あるいは人類の生命伝承については,古来から神秘性を保ちつづけてきたが,染色体が大きな役割を演じているものだという考えがこれらによつて次第にたしかなものになつてきたのである。
個体の形質が過不足なく細胞から細胞へ受継がれる機構について,人間以外の生物で受精時の卵と精子の核融合,あるいは有糸分裂時における染色体の発見とその行動に関する知見によつてすでに得られていたが,人類の染色体についても,技術的な制約がのぞかれ,容易に観察されるようになり,この理論は人類においても同様であることがたしかめられた。次には当然のように遺伝疾患,異常個体を染色体上の異常としてとらえようと努力がなされるようになつたのである。
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