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I.子宮内膜症の診断
子宮内膜症の治療と診断ということで簡単に私の意見を述べたいと思います。
まず,診断について簡単に申し上げたいと思います。endometriosisには,sichcres Zeichenというものがありませんので,妊娠の診断の場合のように,wahrscheinliches Zeichcnを集めて,それぞれに総合的な診断をする以外に方法がないのであります。患者の訴え,病歴,それから臨床的に診断したこと,これらを総合して診断するわけでありますが,その場合に,これらのひとつひとつの因子を評価するのに,それらがどれくらい価値があるかということが問題になります。Masson, J.C.の表により,2,686例の患者についていつたいどの臓器が1番よけいendometriosisに冒されているかということをみますと,冒された臓器が4,365ありますが,1人で3カ所も4カ所もあつたものもあるし,あるいは1カ所しかなかつたものもあるわけです。これで見ますと,子宮体部が1番多く,それから卵巣,Douglas窩腹膜,S状結腸というふうにうんと減つて,卵管も非常に少なくなつています。私は日本でもだれが取り扱つた例でも,大体そう違う数字ではないのではないかと思います。そこでこういうことを念頭において,endo-metriosisの症状について考えてみますと,月経前期疼痛だとか,月経中の疼痛だとか,下腿,下腹痛,不妊,性交痛などの頻度が報告者によつて非常に差があるのも当然であると思えます。たとえば,不妊でも今までお話しになつた方の間でも,非常に差がありましたが,それはやはり,1人の患者で何カ所かの臓器に内膜症が合併し,しかも各例によつてそのうちどの臓器が一番強く侵されているかがだいぶ違うからです。少しオーバーにいえば,ほかのところはたいしたことはないのに後方の侵襲が強く,直腸や直腸腟中隔が強く侵かされている例は他にたいした症状がないのに月経のときに限つて,排便のときに出血があるといつたような,特異な例もあるわけでありますから,性器のうちでどことどこが冒されて,そしてそのうちでどこが1番ひどいかによつて患者の主訴も全く違うし,臨床検査の結果も違うと思うのです。そういう点から,病歴だとか骨盤内の双合診所見で診断する場合に,統計的にみて普通一番多い主訴が一つあるから,これは怪しいぞ,多分そうだろうというような診断はつけられないわけであります。そこで,たとえぼ主訴についてみましても,私のところでは月経痛,下腹痛よりも,過多月経だとか出血のほうが多いし,不妊症も私のところでは非常に少ないのです。ほかのところに比べるとお話しにならないほど少ないのです。主訴の6番目に性交痛がありますが,どうも私のところの先生方はお行儀がいいというか,つつましいと申しますか,性交痛のことは一つも聞かないらしいので,それで診察した後に,どうもこれは性交痛があるに違いないと思つて,患者にこういう病気は遠からず性交痛が出てくると思うから,性交痛が出てきたら,早く手術しないと病巣が進行してからは手術が困難であると話しますと,患者は,いや実はそれで来たんです,というようなケースがかなりあります。だから,そういう点から見ますと,この性交痛だとか不感症だとか冷感症といたようなものは,かなり大きな率を占めるのではつないかと思います。
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