原著
胎向の起因に關する研究
佐伯 政雄
1
,
土屋 和子
2
1慶應義塾大學醫學專門部
2慶應中野病院産婦人科
pp.314-320
発行日 1951年8月10日
Published Date 1951/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200520
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緒論
妊娠並に分娩時の胎兒の胎向は第2胎向に比し第1胎向が著しく多く,其の頻度は約5:2と見做されているが,第1胎向の多い理由並に胎向發生の機序に關しては1-2の説は記載されているが假説に過ぎずして,科學的論據は今日のところ未だ證明されていない。
著者の1人佐伯は,さきに妊娠末期に於ける骨盤位胎兒の外廻轉に關する研究の途路,次の如き事實を發見して,胎向に特に興味を覺え,爾來胎向に關する研究を始めた,即ち外廻轉によつて胎位及胎向を術前の反對側へ(例えば,第1骨盤位を第2頭位に)人爲的に變更した際,胎位は術後變化しないが胎向は自己廻轉して術前の胎向に復歸することが甚だ多い。殊に第1骨盤位を第2頭位に廻轉した際に著しい。統計的に見ると,外廻轉術で第2頭位に換えたものの中,72%は第1胎向に復歸し,第1頭位に廻轉したものは,僅かに33%だけが元の第2胎向に復歸した。從て廻轉直後第1胎向及び第2胎向略々同數だつたものが,其後自己廻轉によつて,第1胎向75例,第2胎向33例となり,其の比は5:2で一般分娩時の胎向比率と同値となつた。之の事實は甚だ興味深い現象で,胎向は偶發的現象ではなく,必然的に發生する現象と考えさるを得ない。
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