隨想
私の言い分
井合 勉
pp.47
発行日 1950年1月10日
Published Date 1950/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200311
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去る11月6日夜の日比谷公會堂に於ける健康保險は所期の目的を達しているかと題する放送討論會の席上末高氏が「健康保險を引受けておるところのお醫者さん方が全をもうける爲の業態である開業醫というもので行われている云々」と言われたことは非常な反響を呼んでいる.これについては氏は開業醫制度を批判したのであつて,開業醫そのものを批判したのではないと言つていられるが私も一言述べさせて頂きたい.氏の意見では多分現左の日本の醫療體制は開業醫が營利的になるから醫療が不充分不完全になるのであつて,醫療體制の一環中には製藥業者もあり醫療器械業者もあるのにただ開業醫さえ利を吸收しなければ理想的なる醫療が行きわたるとでも思つていられるのであろうか.若し然らばこれはあまりにも偏見である.抑々醫業は病を治するのか本旨であるから開業醫とてもその例外ではないのである.難病を心血を注いで治しえた時の喜びは醫者のみの知る喜びであろう.假に百歩を讓つて開業醫が儲け主義だとしてもそれは心底からの本質的儲け主義なのではなく不可抗力的儲け主義なのである,開業醫を營利的たらしむるとすれば,それははやく言えば重税であろう.
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