今月の臨床 胎児心拍数モニタリング
胎児心拍数モニタリング発展の歴史
濱田 真一
1
,
清水 郁也
1
,
村田 雄二
1
1ベルランド総合病院産婦人科
pp.6-11
発行日 2011年1月10日
Published Date 2011/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102540
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はじめに
胎児心拍数モニタリングは,妊娠中および分娩中の胎児の状態を把握するうえで,現時点での臨床現場に必要不可欠な検査であると信じられている.胎児心拍数モニタリングが導入された当初は,これにより早期に胎児の低酸素血症を発見できれば,悪化した子宮内環境から胎児を救出することで,子宮内胎児死亡,脳性麻痺や精神遅滞の発生を予防できると考えられていた1).しかし,その後の研究で脳性麻痺の頻度に変化がないことが明らかになった2).胎児心拍数モニタリングと間歇的胎児心拍数聴取のメタ分析による比較3)では,胎児心拍数モニタリングを行うことで,胎児低酸素血症による周産期死亡に対しては減少の効果が認められたが,胎児機能不全による帝王切開率はむしろ増加した.
胎児心拍数モニタリングは,胎児を医学・医療の対象として認め,胎児生理学を学問として認知させ,周産期医学の発展に大きく寄与した方法論であると言っても過言ではない.この歴史を振り返ることで,これまでいかにわれわれが紆余曲折しながら前進してきたかを知り,さらにそれによっていかに将来においても紆余曲折があるであろうことを認識させられる.
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