今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
I 周産期
【下肢静脈瘤】20.皮下静脈の怒張,拡張がみられる下肢静脈瘤の妊婦です.
杉村 基
1
1浜松医科大学周産母子センター
pp.398-399
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101450
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1 診療の概説
下肢静脈瘤は先天的な素因に加え,長時間の立位,妊娠,加齢により発症,増悪すると考えられている.妊娠中には妊娠週数が進むにつれ下肢静脈瘤の所見が顕在化する.こうした変化の原因として,仰臥位時における大腿静脈圧が妊娠初期に約8 cmH2Oであるのが妊娠10週台より漸増し,妊娠末期には約24cmH2Oに上昇することによると考えられている 1).大腿静脈圧の上昇は側臥位をとることや分娩後には速やかに正常化することから,主として増大する妊娠子宮によって骨盤内の静脈が圧迫されることや,下大静脈が圧迫されることによる.
皮下静脈の怒張,拡張はこのように妊娠中の大腿静脈圧の上昇によるものが大半で,下腿の浮腫も伴うことがみられ,足のだるさなどの訴えが多い.また皮下静脈の怒張を伴う下肢静脈瘤は血管壁の拡張に伴う疼痛を訴えることも多く,さらに増悪する場合には皮下出血の皮診を示すこともある.一方,こうした骨盤内の静脈圧の上昇は下肢のみならず,外陰,腟,直腸肛門部の静脈瘤を合併することもある.特に外陰,腟部の静脈瘤は長時間の排便姿勢などで著明に怒張拡張をすることもあり,便秘を日ごろより避ける必要がある.さらに,分娩時には拡張した静脈瘤から予想外の出血を呈することもある.過度の血流のうっ滞を伴う静脈瘤には表在性静脈血栓を発症する場合もあり,発赤,疼痛,発熱といった臨床症状を呈する場合もある.
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