今月の臨床 症例から学ぶ子宮内膜症─子宮内膜症を侮るな
子宮内膜症の遺伝子異常
生水 真紀夫
1
1金沢大学大学院医学研究所・がん医科学専攻・機能再生学講座・分子移植学
pp.1487-1493
発行日 2004年12月10日
Published Date 2004/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100691
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はじめに
子宮内膜症は家族内集積傾向を示すことが知られており,遺伝学的解析からその遺伝様式は多遺伝子遺伝と推定されている1).また,内分泌攪乱物質などの環境因子の関与も推定されており,内膜症は多遺伝子・多要因の相互作用で発症する遺伝子病とみなされている2, 3).
内膜症の遺伝子異常について,これまでにさまざまの角度からの検討が行われてきた.内膜症病変の腫瘍性増殖に注目して,染色体異常や染色体不安定性あるいはDNAミスマッチ修復遺伝子・がん遺伝子・がん抑制遺伝子の変異や欠失などに関する検討が行われてきた3, 4).また,内膜症をある種の免疫不全による自家移植片の生着あるいは遅延型免疫反応による炎症性病変と捉えて,各種のサイトカインや免疫活性を検討した研究も数多く報告されてきた.最近では,アレイ解析により網羅的に遺伝子発現を解析して内膜症の遺伝子異常を明らかにしようとするアプローチも行われている.また,遺伝子多型(とくに一塩基多型,SNP)と内膜症との相関を解析することにより,発症に関与する遺伝子を明らかにしようとするアプローチもある4).
これらの多くの研究にもかかわらず,内膜症の原因はいまだ明らかにされておらず,今後の研究が必要である.本稿では,これまでに報告された遺伝子異常に関する報告を俯瞰するに当たっての注意点について述べた後,病因・病態に関連すると思われる遺伝子発現の異常について,若干のわれわれ自身の成績を加えて最近の報告を中心に概説する.
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