連載 症例
Thalidomide, celecoxib, irinotecanによりtumor dormancyが得られた進行子宮腺扁平上皮癌の1例
羽田 正人
1
,
水足 一博
1
1愛鷹病院外科
pp.1188-1191
発行日 2004年9月10日
Published Date 2004/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100614
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癌性悪液質に合併した胸水・腹水のコントロールは,癌が末期になるほど,原疾患のコントロールとともに非常に困難となる.胸膜癒着を目的としてドレナージ後に種々の化学物質,抗癌剤が使用されるが,多くの症例で再貯留が早期にみられる.Thalidomideの抗悪液質作用,血管新生抑制作用,さらには胸水・腹水貯留抑制作用にcelecoxibの持つ発癌抑制作用を従来の抗癌剤に組み合わせて使用することは合理的であると考える.
今回われわれは,長期にわたってthalidomide,celecoxib,抗癌剤を使用して悪液質ならびに胸水・腹水をコントロールでき,外来でフォローアップできた症例を経験したので報告した.副作用としては湿疹がときに観察され,そのほか抗癌剤による骨髄抑制もみられた.しかしながら,抗癌剤投与に伴う消化器症状は軽減できたものと考えられる.残念ながら,喘息のある患者には適応しえない.
はじめに
胸水・腹水のコントロールは,癌が進行するほど癌性悪液質と相俟って非常に困難となる.胸膜癒着を目的として,ドレナージ後に種々の化学物質や抗癌剤が使用されるが,再貯留が多くの症例でみられる.治療の際の薬剤の選択,貯留胸水・腹水のドレナージ施行の可否,腺扁平上皮癌での治療の差異など多くの問題を含んでいる.今回われわれは,子宮腺扁平上皮癌で著しい胸水貯留を起こした症例にthalidomide,celecoxib,irinotecanを使用して良好な経過を得たので,文献的考察を加えて報告する.
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