視座
これからの医療
増原 建二
1
1奈良県立医科大学・整形外科
pp.1077
発行日 1984年10月25日
Published Date 1984/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908683
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最近,シメチジン製剤の普及に伴って,胃潰瘍の手術患者数が急速に減少してきたようであるし,整形外科の領域でも,先天股脱の症例に出遭う機会が少なくなったという印象が強い.後者の現象については,新生児における発生率そのものが減ったのか,整形外科医の急激な増加によって,出遭う機会が減ったのか,全国的な統計をとらないと明らかにし難いが,医療や衛生知識の普及による環境条件の改善によって,治療の対象となる患児が減ったことは否めない事実のようである.一方,日本における高齢者社会への変貌は,医療の対象が変性疾患群へと方向転換しつつある現象を生ずるに至った.とくに外科系のなかで眼科,耳鼻科,歯科,整形外科などの領域では,変性疾患に対する再建手術が増加の傾向を示していることは疑うまでもないところである.
今や医学は生物学,電子工学をはじめとした,あらゆる科学の分野からアプローチが試みられている.そして,この医学の進歩は,医療技術や医療機器の開発となって,臨床の場に次々と導入されつつある現状である.ME機器の開発が,診断学や治療学の様相を一変しかねない情勢である.
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