視座
No man's landにおける屈筋腱修復術の進歩
池田 亀夫
1
1慶応義塾大学整形外科
pp.9
発行日 1979年1月25日
Published Date 1979/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908548
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周知のように手指の関節よりPIP関節までの間はno man's landあるいはdead zoneと呼ばれ,特殊な解剖学的関係からこの領域の損傷は予後極めて不良とされ,長い間,多くの外科医から敬遠されてきた.この領域の外傷は日常決して少なくなく,ガラス,ナイフ,包丁,その他鋭利な刃物などで,老若男女を問わず,頻発する.治療成績向上を目的に多くの努力が払われてきたが,一般に実効をあげるまでに至らず,難攻不落の領域とされてきた.
従来,この領域における屈筋腱損傷に関する実験的研究はそれ程多くはなく,Lindsay(1960),Potenza(1962)らの業績が有名である.Lindsayはepitenonのみで修復可能といい,一方Potenzaは腱自体による修復はなく,腱鞘または腱周囲組織からの肉芽組織により修復されるといい,換言すれば一時期は必ず周囲と癒着するとした.実験部位は異なるが,Skoog(1954)は腱の修復はparatenonが主役を演じ,epitenonのみでは修復し得ないと両者の中間的見解をそれ以前に述べている.一次的腱縫合法は真に理想的方法と考えられるが.この領域ではPotenzaの説が大勢をしめ,縫合すると術後癒着が必発し,手術は失敗することが多いと信ぜられ,Bunncll以降二次的腱移植術が原則とされてきた.
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