視座
胸郭出口症候群の診断
阿部 正隆
1
1岩手医科大学整形外科
pp.235
発行日 1988年3月25日
Published Date 1988/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408907792
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20歳代後半〜40歳代前半の人(女性にやや多い)に側頸部痛,後頸部痛,頭痛,肩凝り,肩甲部痛,腕の惓怠感,痛みやシビレ,握力低下,上腕三頭筋の筋力低下,手の冷感などの愁訴のうち1つでもみられたなら,本症候群(TOS)をまず疑わなければならない.長時間のドライブなどで,また美・理容師,看護婦,塗装業などは仕事によって愁訴が増すのが特徴的である.体型はナデ肩またはマル肩の人に多いとされている.
TOSの診断は,各種の冠名圧迫試験で上記愁訴の発現およびその増強の有無をみる.Roosは,健常者の25%はWright testで橈骨動脈の拍動が消失することと,TOSの98%の患者は動脈の圧迫と無関係であったことから,橈骨動脈の拍動の消失そのものには必ずしも診断的価値はないとしている.しかし彼の意見には全面的に賛同するわけにはゆかない.Wright testなどで,すみやかに痛みやシビレが発現するケースは腕神経叢型とみてよいと思われるが,30秒〜1分後に愁訴が出現してくる例もあり,この場合,動脈型の可能性も否定できない.Roos testでも,陽性であればTOSと診断して支しつかえないが,神経型か動脈型かの区別はつかない.また当然,神経・動脈混合型もありうると思われる.
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