症例検討会 骨・軟部腫瘍11例
症例4—12年間の経過を示した左手関節腫瘍
森本 一男
1
,
吉岡 裕樹
1
,
岡田 聡
2
,
三村 恵子
2
1国立明石病院整形外科
2神戸大学附属病院病理部
pp.271-273
発行日 1983年3月25日
Published Date 1983/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906701
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
症例:68歳,主婦.病歴:12年前頃より左手関節背側の腫脹と疼痛があり,7年前に受診するも骨に異常なしと言われて放置していた.4年前頃から症状が増強し,X線で骨の破壊を認め,53年8月末に当科に紹介された.入院時,左手関節に腫脹,軽度熱感,運動制限等を認めた.全身状態良好で,軽度血沈亢進の他に検査所見に異常はない.X線で左手根骨及び中手骨に多発性の骨吸収像と周辺部の骨増殖及び硬化がみられた.悪性腫瘍を考え生検を施行した.生検時,弾性硬で黄色調の腫瘍組織が,皮下組織から骨にまでびまん性に浸潤し,周囲組織との境界は不明瞭であった.組織像でMFH等の可能性が考えられたが最終診断には至らなかった.
いずれにしても悪性腫瘍であり,患者の意向で抗癌剤投与にて経過観察していたが,次第に局所症状が増強し,56年9月,切断を目的に再入院した.再入院時の局所所見は腫脹が著明で,手関節と手指の運動は殆んど障害され,X線像での骨の破壊が更に進行していた(図1).一般臨床検査では白血球軽度増多の他に異常はなかった.前腕中央部で切断術を施行したが,現在まで局所再発や転移はなく,経過良好である.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.