臨床経験
Nail-Patella Syndromeについて
中西 忠行
1
,
野末 洋
1
,
岡田 菊三
1
,
生沼 昭一
1
,
有馬 亨
1
,
町田 信夫
1
,
田辺 碩
2
Tadayuki NAKANISHI
1
1国立東京第二病院整形外科
2田辺整形外科医院
pp.522-529
発行日 1977年5月25日
Published Date 1977/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905531
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
爪の栄養障害,骨格の形成不全とくに膝蓋骨の欠損と肘関節の形態異常を合併する先天性遺伝性疾患はNail-Patella Syndromeと呼ばれ,1897年Littleが発表して以来海外では比較的多く報告されている.その病態については時を経るとともに新しい知見が加えられてきたが,その代表的なものが"iliac horn"の発見と遺伝学的な研究といえる."iliac horm"は腸骨後面にみられる円錐状の骨隆起で,他の疾患には見られず本症を特徴づけるものの一つである,現在では,爪,膝蓋骨および肘関節の異常にこの"iliac horm"を加えて4大徴候としている.一方,遺伝学的には本症の遺伝子がABO血液型遺伝子との間に密接な関連があること,非伴性優性遺伝の形式をとることなどが証明されている.
海外では,たとえば1963年Duncanが集収した症例数は44家系400例を越えるにもかかわらず,本邦での報告列はきわめて少ない.東洋人にはNail-Patella Syndromeはないという論文(Carbonaraら)も見受ける程であるが,事実は本症に対するわれわれの関心が薄いということらしい.著者らは本症の3家系を経験しているが,あとの2家系については,症例の検索中という本症に対する関心が高い時に発見したいいきさつがある.ここにその報告をするとともに文献的に本症の病態につき若干の考察を試みたい.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.