臨床経験
いわゆるthoracic out-let compression syndromeについて
小野 啓郎
1
,
小田 義明
1
,
大田 寛
1
,
網谷 克正
1
,
芥川 博紀
1
,
天野 敬一
1
,
石田 修
2
,
打田 日出夫
2
,
曾根 脩輔
2
1大阪大学医学部整形外科学教室
2大阪大学医学部放射線科
pp.375-387
発行日 1970年5月25日
Published Date 1970/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904400
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いとぐち
頸,肩,腕の痛みやだるさを訴える症例のうち,斜角筋三角や肋鎖腔における血管・神経束圧迫によるものは確実な診断をくだすことが必ずしも容易とはいえない.治療も,したがつて常に適確だといいきれないものがある.次にあげるような問題点がその理由である,血管の圧迫によるといわれるいくつかの徴候が診断の決め手になつている.にもかかわらず橈骨動脈の脈拍の変化が胸郭出口における血管圧迫によるという実証は十分でない.
原因がもつぱら前斜角筋の肥大・緊張・形の上の異常に求められているが,事実として確認されることは稀である.一般に症状が肢位により・あるいは時に応じて出現することからいつても,血管,神経束の圧迫,絞扼が常在するものとは考えにくいわけである.頸—鎖骨下—肩の経路にわたつて血管神経束をとりまくすべての構造が動的に—いろいろの肢位で—検討されねばならないわけである.
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