視座
足の問題
青池 勇雄
1
1東京医科歯科大学医学部整形外科学教室
pp.839
発行日 1969年11月25日
Published Date 1969/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904147
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小外科という言葉がある.これはいろいろの意味を含んでいるのであろうが,だいたいは小さい切り傷とか表在性の腫瘍などを切除する程度の簡単な小切開で済んで,生命には何の影響も及ぼすことのないような手術の外科と解されてよい.したがつてその対象の器官といえば,手,足のような末梢部位が多いことになるが,しかし小外科という意味は決して手術をおろそかにしてよいというものではない.爪一つ切り取るにしても,あとに痛みが残らないように細かい注意が必要となり,かえつてそういう点ではいつそうやりにくいともいえる.このことをいましめて,昔から,小外科医(おそまつな外科医)はあつても小外科というものはないとの警句がある.メスを握るもの常にこの警句を念頭に入れておかなければならない.
足の病気は幸いに手のものに較べると少ない.一番難物であつた先天性内反足の治療もかなりよい成績が得られるようになつたし,またポリオの麻痺足はほとんど見られなくなり,むしろ最近はリハビリテーションの進歩に伴つて,片麻痺患者の足の問題が浮かびあがつてきている.足で一番困ることは起立,歩行に際しての疼痛であつて,変形の終局も結局は疼痛につながるわけで,疼痛を除くことが目標となる.
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