巻頭言
論文発表に思うこと
岩田 久
1
1名古屋大学医学部・整形外科
pp.865-866
発行日 1994年8月25日
Published Date 1994/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901418
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臨床教室では特に長期にわたる経過観察の報告は重要である.ある時期,ある方法で治療を施した結果の報告である.10年,いや20年も経過すれば,その時点に教室にいた人も外に去り,既に現役を退いた人さえいる.しかし,現在まとめようとしている症例は,そうした人が適応を決定し,手術をした症例である.こうした中で,その結果の報告はまとめた人が発表論文のトップの名前をとり,それをその時指導した人が,あるいは協力した人が連名者として名前を連ねるのがせいぜいである.どの臨床教室も,疾患別グループ制を敷いているところが多いと思われる.そして,年々歳々構成員は変わってくる.ある時点で,過去の症例をまとめ,批判し,論文にすることは非常に大切なことである.しかし言いたいことは,そこに至るまで地道に患者をフォローし,記録して来た先輩の諸先生の努力があってこそデーターも散逸せず,まとめることが出来たのである.この場合,せめて,acknowledgementに名前をのせ,また,出来あがった時に別刷とともに,その時までに努力していただいたことに感謝の気持ちを表すことも重要である.先人を批判し,抹殺してこそ自分が浮かび上がることが出来るなどと考えるのは傲慢で,言語道断である.ややもすればこうしたこともあるやに思えてならない.
現在他の教育機関に応募する場合,あるいは研究費を獲得しようとする場合など,世界的な傾向として,業績中心になりつつある.
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