書評
小児と成人のための超音波ガイド下区域麻酔図解マニュアル
鈴木 昭広
1
1自治医科大学病院・麻酔科学・集中治療医学
pp.453
発行日 2022年4月25日
Published Date 2022/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202317
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『小児と成人のための超音波ガイド下区域麻酔図解マニュアル』.書籍のタイトル自体で,「小児」が「成人」より大きく書かれていることがまずユニークだ.平置きで「映える」こと請け合いである.麻酔科領域において,確かに小児の鎮痛は長いことおざなりにされてきた.そもそも暴れて泣き叫ぶ小児に,区域麻酔など危なくてできやしない.術中もおとなしくしているはずもない.手術の大小にかかわらず,何か必要があればすぐに全身麻酔.大人なら併用するはずの硬膜外麻酔もなく,戦う武器はせいぜい仙骨ブロックのみ.起きた患児は,創は痛いわ足は動かないわでパニック状態.手術をした後もやっぱり手がつけられない.「母親が1番の薬だよ」と全ては母親に丸投げ…….私自身,恥ずかしながらこういうプラクティスを繰り返し,古くからの悪習を後輩に伝える悪い先輩だったことだろう.しかし,前職の東京慈恵会医大で小児麻酔への考えを改めさせられた.JPOPS(Jikei Post-Operative acute Pain Service)という術後疼痛管理チームが術後痛のプロトコールを決め,小児でも胸部や腰部の硬膜外を実施し,区域麻酔の補助のあるなしにかかわらず,薬をタイトレーションして覚醒させ,抜管後にスヤスヤと過ごすわが子を母親がそばの椅子に座って見守る風景が当たり前の術場回復室(PACU:post-anesthesia care unit).もし子供が泣いていようものなら「なんで泣いてんだ!?」とU主任教授が怒り心頭でやってくる.それ以来,小児事例が当たると,わが子の麻酔と思って他のスタッフと同じような穏やかな目覚めを提供できないかを考えるようになった.
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