最新基礎科学/知っておきたい
二酸化炭素の経皮吸収による悪性腫瘍の抗腫瘍効果
秋末 敏宏
1,2
,
河本 旭哉
2
,
原 仁美
2
,
深瀬 直政
2
,
上羽 岳志
3
,
酒井 良忠
3
Toshihiro AKISUE
1,2
,
Teruya KAWAMOTO
2
,
Hitomi HARA
2
,
Naomasa FUKASE
2
,
Takeshi UEHA
3
,
Yoshitada SAKAI
3
1神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域
2神戸大学大学院医学研究科整形外科
3神戸大学大学院医学研究科リハビリテーション機能回復学
pp.644-646
発行日 2016年7月25日
Published Date 2016/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200580
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はじめに
二酸化炭素経皮投与療法は,二酸化炭素を経皮的に体内へ吸収させ効果を得る方法である.われわれは,まず,本治療法を腫瘍以外の治療に応用すべく,ラットの筋肉に対する二酸化炭素経皮投与療法の効果を検討し,二酸化炭素経皮投与によりラット筋組織量の増加とともに,ミトコンドリア量の増加と,その調整蛋白であるPGC-1αの発現も増加していることを報告した1).さらに,ヒトにおいて,二酸化炭素を経皮投与することにより,局所組織の酸素分圧が上昇することを報告した2).一方,悪性腫瘍においてはミトコンドリア量が減少し,それにより,ミトコンドリア経路のアポトーシスが抑制されていること3),また,悪性腫瘍においては一般に腫瘍組織内の低酸素状態が認められ,低酸素状態によって惹起される腫瘍組織内における腫瘍増殖に関するメカニズムが過去の研究で示されてきた4,5).
われわれは,二酸化炭素経皮投与療法によって,悪性腫瘍細胞内のミトコンドリア量・活性を誘導し,かつ悪性腫瘍組織内の低酸素状態を改善させることにより,悪性腫瘍細胞の増殖さらに転移能をコントロールできるのではないかとの仮説を立て,ヒトMFH/UPS(malignant fibrous histiocytoma/undifferentiated pleomorphic sarcoma)細胞および骨肉腫細胞に対するin vivoでの二酸化炭素経皮投与療法の効果を検証し,本療法の作用メカニズムについて分子生物学的,免疫組織化学的に解析してきた.
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