視座
「捜査関係事項照会書」vs.“個人情報保護”
三河 義弘
1
1川崎医科大学整形外科
pp.841-842
発行日 2007年9月25日
Published Date 2007/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101122
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多種多様な疾患を扱う整形外科診療において,治療した患者が犯罪と関わっている事例に少なからず遭遇する.とくに外傷例に多い.このような場合,通常最寄りの警察署から「捜査関係事項照会書」なる文書が送付されてきて,当該患者の外来,入院における詳細を微に入り細にわたって照会される.こちらは,まるで自らが罪を犯したかのような重い気持ちを抱きつつ,できるだけ正確な回答書を謹んで作成する.なんと言っても,警察からの照会なのだから.しかしながら「???」ちょっと待てよ,という場合がなきにしもあらず.以下に,私の所属する医師会関係の先生から提示された事例を紹介する.
とある町で新生児の置き去りがあった.それで,警察官がその町のある産科医を訪れ,近々2カ月間に出産予定の妊婦で最近当該医院に来なくなった人の住所,氏名を知りたいと告げた.院長は,はたと考え込んでしまった.もちろん協力したいのは山々だが,例の,個人情報保護法の絡みでどうすればいいのかわからない.もしも提供すれば,警察はその人のところに行って,「お産したか」,「中絶したか」などを尋ねるだろう.中には,家族に知られたくない人もいるかもしれない.当然,その情報は当該医院から出たと患者さん達にはわかるだろう.すると,場合によってはその人達から,院長は「個人情報保護法」違反で訴えられるかもしれない.一応,警察官は「捜査関係事項照会書」を持参してきている.これには,司法警察員名で「捜査のため必要があるので,下記事項につき至急回答願いたく,刑事訴訟法第197条第2項によって照会します」と書いてある.
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