連載 医療の国際化 開発国からの情報発信
北タイエイズプロジェクトの活動(1)
石田 裕
1
Yutaka Ishida
1
1国際協力事業団ミャンマーハンセン病対策・基礎保健サービス改善プロジェクト
pp.336-337
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100664
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北タイパヤオ県では,妊婦のHIV感染率が増大し,1994年頃には全妊婦の10%を超えるようになった.HIVの母子感染率は約30%で,その3分の2が出産時に血液を通しての産道感染,3分の1が母乳を通しての感染であると考えられている.そこで,①出産時に母体の血中HIVウイルス量を抑えるために,妊娠後期から抗レトロウイルス剤を投与する.②乳児に生後1週間抗レトロウイルス剤の予防投薬を行う.③母乳を全面的に中止し,人工栄養(粉ミルク)を与えることを組み合わせて,HIV母子感染率を10%前後に抑えることが可能である.タイでは,まず北タイなどで1997年から試験的に実施され,この経験を基にして,2000年からは全国で一般保健サービスとして行われている.
JICAプロジェクトは1998年から北タイにおけるこの試験プログラムに協力し,技術支援のほか,抗レトロウイルス剤,粉ミルクの供与を行った.2000年からは通常の保健サービスとして採用されたことから,このサービスの質の向上のための技術協力として,現地で活動しているNGOの協力を得てモニタリングを行うことにした.県保健局としては,表1のようにサービスを行っているが,実際に受益者である母親たちがどのようにサービスを利用し,どのような気持ちでサービスに参加し,何の問題があるのか,当時はわからなかったからである.
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