メディカルエッセー 『航跡』・44
酷暑の夏にむかしのおはなし
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1180-1181
発行日 2000年9月20日
Published Date 2000/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904208
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7月初旬,学会の招待でニッポンを訪れた.梅雨の明けやらぬ日本列島は,聞きしにまさる酷暑であった.クーラー音の心細くうなる室内でじっとしていても,額から流れる汗は止まらない.それでもニッポン男性は長袖のワイシャツにきりりとネクタイを締め,スーツをお召しになって涼しい顔.日頃,世界一悪名高いエネルギー大消費国に住み,冷蔵庫内とほぼ等しい室温を保つ環境に毒された身体には,スーツどころか,Tシャツにショーツ姿でいても耐え難い暑さである.
耐えがたきを耐えながら今,トウキョウのホテルの一室に閉じこもり締め切りをとっくに過ぎた小稿を書いているところである.お上からのキツイお達しによる省エネとやらで,クーラーも思うようには冷風を吹き出してくれぬ.ゆで卵と化した頭では,思考も記憶も途切れがち.やむなく軽いおはなし3題でマス目を埋める次第に相なった.
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