臨床外科交見室
「ハルステッド理論」とは—ハルステッドの原典を繙く
佐藤 裕
1
1北九州市立若松病院外科
pp.493
発行日 1999年4月20日
Published Date 1999/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903581
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「乳房内に発生した乳癌は,増大するにつれて周囲組織に浸潤していきながら,リンパ管を介して全身に転移していく.その際,所属リンパ節は癌細胞が全身に広がるのを防ぐ防波堤(barrier)になっている.乳房を癌を含めて一塊(en bloc)として切除する事が根治になる」というのが,一般的に理解されているいわゆる乳癌の進展に関する「ハルステッド理論」である.乳癌の手術が縮小化に向かっている現在,「ハルステッドの定型的乳房切除術(standard radicalmastectomy)」は,とくにFisherらが「乳癌は全身病である」と主張して以後,批判の的になっている.しかしながら,術式の歴史的変遷を概観し,“一時代を画した術式”を見ていく場合には,その時代背景を無視することは出来ない.そこで,ハルステッドの原典を繙き,ハルステッドの言わんとした論点を探ってみた.その第一報は1894年のAnnals of Surgeryに載った論文1)で,巻末には50人の患者の転帰がわかる病歴の要約が載っている.ここでは,最上部鎖骨下リンパ節,いわゆる“ハルステッドリンパ節”のことであるが,に転移があるとその予後は“unfavorable”とか“hope-less”としている.
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