書評
—辻本哲郎(著)—これで解決! みんなの臨床研究・論文作成
家 研也
1
1聖マリアンナ医大川崎市立多摩病院・総合診療内科
pp.510
発行日 2022年5月20日
Published Date 2022/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213702
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臨床研究や論文執筆に取り組む上で,避けて通れない「壁」がある.この壁はさまざまな場面で,姿かたちを変えて繰り返し出没してわれわれの心を折ろうとする.私自身,研究に取り組み始めた当初から,数えきれない壁を経験した.研究テーマ探し,文献検索,研究計画書作成,データ収集,統計解析,論文の書き方,投稿先探し,rejectに心が折れる経験,意地悪な査読の対処,そもそも忙しくて研究が進まない! など,多岐にわたる.思い返すと,それらの場面で壁を乗り越える手助けを常に誰かがしてくれた.それは指導医・メンターに限らず,仲間,後輩,時に書籍であったりもした.このように,初心者が臨床研究を論文化するまでは手取り足取りの指導が必要な場面だらけである.
本書は臨床医でありながら50編近くの原著論文を筆頭著者として世に送り出し,さらに多くの後輩の研究を指導してきた辻本哲郎先生による,気持ちがいいまでの「実践の書」である.臨床研究デザインや統計解析,論文作成に関する本は多数存在するが,本書の特徴を端的に表すと「身近で面倒見の良い先輩」である.研究初心者がつまずく壁一つひとつについて,具体的にステップを示してくれる.特にコラムが秀逸で,臨床研究の現場のリアルがそこにある.臨床現場の一隅で隙間時間に取り組む研究の場で,面倒見の良い先輩が失敗談やコツを共有し,曖昧だった概念の理解を助け,次に何をしたら良いか具体的に示してくれる,そんな頼れる先輩を常に座右に置いておけるような一冊である.
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