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編集後記
栗原 雅直
pp.1172
発行日 1965年11月1日
Published Date 1965/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201951
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- 文献概要
編集委員をしておられた田縁助教授が,この9月17日にBaselのKielholz (スイス)教授のもとに留学され,当分の間わたくしが代理をつとめることになつた。自らの懶惰を罰するよい機会であると思い,身のほども知らずあとをお引受けすることになつた次第である。
最近「新潮」誌上で,岡潔・小林秀雄両氏の対話に接する機会を得たが,岡博士は「最も知性的であるべき数学でも,それが矛盾なく成立するためには,かえつて感情的な支柱と充足とが必要な場合がある」と説いておられた。数学の世界と医学論文の世界とはもちろん異質なものであるが,われわれが論文という形で仕事の成果をまとめる場合,論証の一貫性とともに,論旨がピッタリ感ぜられることも必要なのではあるまいか。医学は一面において実践の学であるから,論旨の通らぬ成果がまつたく顧みられないことは無論であるが,たとえいかに論理的であつても,その設問回答の仕方があまりにも非情で機械的なものであれば,これまたたやすく時の流れの中に忘れ去られてしまい,人類への寄与たり得ないという結果がおこるであろう。
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