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Washington大学のCPC。28才婦人,27才1月より嘔吐・上腹痛あり体重減少す。吐血・下痢なし。5月某院でBa透視をうけ異常なし。貧血のため輸血。嘔吐はさつたが腹痛つづく。28才6月全身倦怠・頭痛・めまいあり再度輸血。来院時心尖に2/6収縮期雑音あり,Hb6.3g,Ht23,網赤球4.6%,栓球36.5×104,白8100,低色素貧血。尿正常。WaR (—)。血糖99, BUN20,Ca9.8,SGOT 13,SGPT 5,血漿蛋白やや低いが分屑異常なし。Coombs(—)。LE細胞(—)。17KS 7.8,17OHCS 8.1,5HIAAゼロ,血清Fe 9/μg。鉄結合能497μg%,骨髄正常,糞guaiac0〜+++,右肺下野に径5.8cm,非石灰化限局性,分葉状の陰影あり。在院10日ごろ尿Watson-Schwartz (+)。回腸末端にBa検査で小腫瘤を疑う。第16日麻酔を開始したところ亢奮し,やがて心停止し,回復するのに数時間を要した。その後9日して開腹。Treitzより20cmの部の空腸に小腫瘤発見,切除。melanosarcomaである。おそらく他部からの転移であろう。腹腔内には転移なし。さらに3週後右下艇切除。やはりmelanosarcomaで転移と思われる。全身精査したが皮膚にnaevi数個あるほかは原発巣みあたらず。多分皮膚に原発し原発巣は自然治癒してしまつたと思われる。尿Watson-Schwartzテスト,腹痛嘔吐,麻酔合併症は本患者がacute porphyriaであることを示す。文献にも悪性腫瘍に伴ったP症の10例が報告されている。腫瘤自体が大量のポを含有し,腫瘤根治でP症まつたく消失したという例がそのなかにある。この患者は尿にcopro,uro-pを正常の10倍排泄し,p—nogen (—)で,おそらくmelano—sarcomaの結果おこつたmixedporphyriaであろう。この患者のクレアチニンの尿/血漿比は46:1で,尿は血漿に比しhyperosmoticであり,いわゆるinappropriate ADH secretionに一致した。acute inter—mittent Pの急性発作期にはADH分泌がinappropriateで,そのために低Na血症になるものがある。
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