書評
—中脩三 編集—神経化学(第2版)
笠松 章
1
1東大分院神経科
pp.631
発行日 1958年9月1日
Published Date 1958/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200710
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最近めざましい躍進の途上にある神経化学の各領域を,この方面の第一線にあるわが国の諸学者が分担執筆し,これを中脩三教授が編集したのが,このA5判581頁におよぶ本書の全貌である。改板であるが,全体として面目を全く一新している。これもこの方面における大きな進歩を物語るものでもある。第1部「脳の組成と代謝」,第2部,物質代謝と神経機能,第3部「疾患の生化学」に分れているが,冒頭の中教授による「神経化学の展望」とともに,各部のはじめに吉川春寿,塚田裕三,江副勉の各氏による解説的な「はしがき」の加えられたことも,読者に対する親切な処置である。(ついでに,これは編集者より,むしろ出版社に対する意見であるが,巻末にくわしい索引が加えられるならば,本書の性質上,その価値を一更たかめたであろう)。
さて,吉川教授は,この解説で脳と自動制御装置と対比し,エネルギー消費の面で,類似の点のあることをのべているのに注意がひかれる。自動制御装置は動作していようといまいと,導作しうるためには,全真空管を点じておかねばならない。動作しているとき,出力部分を除いて,真空管のエネルギー消費は,それほど大きく変るものでない。脳の酸素消費は,子供で全身の約2分の1,大人で約5分の1であり,ブドー糖の消費も,7日約100grであろうと推定されている。
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