Japanese
English
ディベート
「非分裂病性自生思考が単一症候的に出現した1症例」(井上洋—ほか:本誌44:129-136,2002)に対する討論
A Discussion on the paper 'A Case with Nonschizophrenic Autochthonous Idea' by Y. Inoue et al.: Is it not Autochthonous Thinking, but 'hallucination verbale psychomotorice' (Séglas, J.)
中安 信夫
1
Nobuo NAKAYASU
1
1東京大学大学院医学系研究科精神医学分野
1Department of Psychiatry, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
pp.769-771
発行日 2002年7月15日
Published Date 2002/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405905091
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
畏友井上洋一氏ほか2名によって本誌に上記の論文が掲載された。貴重な症例報告と思われるが,筆者の見るところ,その貴重さは本症例が示した症状が井上氏らのいう非分裂病性自生思考であるということではないと思われる。
井上氏らの症例を要約すると,患者は初診時49歳の女性で前年末より「頭の中で自分が言っているような感じの独り言」「頭の中で独り言を言っている。相手は出てこないが会話をしている。内容はわかる」「言葉ではない。イメージ。視覚的イメージではない」「自分が言っている感じ。止めることができない」,「内容は日常のこと。突拍子のないことや,理屈に合わないことは浮かばない。自分では考えていないこと。どうしてこんなことを思ったのか,その時は不思議に思っている」,「頭の中に浮かんでいる時には,それに注意が引き付けられるので,今までしていたことを忘れてしまう」「動いている時は,浮かばない。(中略)用事をしている時は忘れている」が生じたものであり,患者は上記の症状に病識を有し,また既往にも現在症にも分裂病を疑わせるものはまったくなく,また3年間の治療経過のなかで各種抗精神病薬のうち上記の体験を軽減させたものは一つとしてなく,唯一sulpirideが精神的に安定させることを通して二次的な治療効果を有したというものである。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.