Japanese
English
研究と報告
麻痺肢からの幻聴を示した脳卒中後遺症の1例
A CVD Patient with Auditory Hallucination Produced from Paralytic Limbs
田中 恒孝
1
,
友野 勝美
1
,
平林 一
2
,
藤田 勉
2
Tsunetaka Tanaka
1
,
Katsumi Tomono
1
,
Hajime Hirabayashi
2
,
Tsutomu Fujita
2
1国立小諸療養所
2リハビリテーションセンター鹿教湯病院
1Komoro National Mental Hospital
2Kakeyu Rehabilitation Hospital
キーワード:
CVD
,
Light hemiplegia
,
Auditory hallucination
,
Abnormal movement of paralytic limbs
,
Psychodynamic interpretation
Keyword:
CVD
,
Light hemiplegia
,
Auditory hallucination
,
Abnormal movement of paralytic limbs
,
Psychodynamic interpretation
pp.251-257
発行日 1991年3月15日
Published Date 1991/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904911
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【抄録】 自己の麻痺肢からの幻聴に支配されて,健側肢の行動を妨害する異常運動を示した脳卒中後遺症の1症例を報告した。患者は66歳の右利き女性で,左被殼出血にて約1カ月間にわたる意識障害から回復したのちに,重度通過症状群と右完全片麻痺を示したが失語や失行,失認はなかった。発症約3カ月後にリハビリテーションセンター鹿教湯病院へ入院し,治療によって精神・身体機能が著しく改善しつつある時期(病後約6カ月)に,健側肢の行動に先立って麻痺肢から「私がやる!」との幻聴を生ずるようになった。患者は右片麻痺の存在を自覚していながら,幻声を信じて麻痺肢を動かし健康肢の行動を妨げる異常運動を重ねていた。麻痺回復に対する過度の願望を捨てさり(麻痺の受容),訓練に励んで杖歩行可能になるのと時期的に一致して幻聴は消失した。麻痺肢から生じたこの特異な幻聴について考察し,その発現機制に関して精神力動論的解釈を試みた。
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