巻頭言
うつ病について思うこと
木下 利彦
1
1関西医科大学精神神経科
pp.1028-1029
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904850
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お母さまは
大人で大きいけれど。
お母さまの
おこころはちいさい。
だって,お母さまはいいました,
ちいさい私でいっぱいだって。
私は子供で,
ちいさいけれど,
ちいさい私の
こころは大きい。
だって,大きいお母さまで,
まだいっぱいにならないで,
いろんな事をおもうから。
(金子みすゞ「腱毛の虹」JULA出版局より)
金子みすヾの「こころ」という詩である。非常に感性豊かですばらしいが,反面小さい頃から母の“こころ”をケアーしてきたであろう歴史が想像され,かわいそうに思えてならない。彼女の豊かな“こころ”と健気な“こころ”の両面が表れている私の大好きな作品の1つである。金子みすヾは,永らく“幻の童謡詩人”とされていたが,1人の児童文学者の熱意により,世に知らしめられ,近年非常に評価が高まっている。生涯に500編余の作品を発表し,26歳で自らその命を絶った人である。親の勧めで意に添わぬ結婚をし,夫の放蕩と無理解により疲弊しうつ状態に陥り,3歳の娘を残し世を去ってしまった。3月に大阪で開かれた,「金子みすヾの世界」展を見に行った直後に,原稿の依頼があり,「うつ病」について少し書かせていただく。
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