ACE阻害薬と非ステロイド性抗炎症薬併用時に出現したリチウム中毒の1例

A Case of Lithium Intoxication, Induced by Combined Use of Lithium, A. C. E. Inhibitors and Nonsteroidal Anti-inflammatory Drug

　【抄録】脳梗塞，高血圧，腰痛症の治療経過中に躁状態を呈したため炭酸リチウム600mg/日を投与したところ，持続する眠気，胃部不快感，嘔気，脱力，失調性歩行，構音障害，両上下肢の振戦，しびれ感などの身体症状を呈し，また血中リチウム濃度が1.84mEq/l（投与中止時の時点では，さらに高濃度と推定される）と高濃度を示し，さらに経過中，腎機能障害を合併した51歳の男性例を経験した。この身体症状はリチウム中毒によるものと考えられた。また，リチウム投与量が平均的な投与量でありながら，血中リチウム濃度が高濃度を示した原因として，併用薬剤である降圧薬のACE阻害薬と非ステロイド性抗炎症薬の関与が推定され，さらにループ利尿薬の関与の可能性も否定できなかった。筆者らが知るかぎりにおいては，本邦ではACE阻害薬が関与したと推定されたリチウム中毒の報告がないため若干の文献的考察を加えて報告した。