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第2回ケンブリッジ-ハイデルベルグ精神医学合同研究会に,ケンブリッジ大学精神科客員研究員という立場で出席する機会を得た。英,独を代表する精神医学の拠点大学によるこの研究会は,2年前にハイデルベルグ大学(以下HD)の主催で行われたのを受けて,今回はケンブリッジ大学(以下CB)の主催で1995年6月22〜25日(そのうち実質的な研究会は23〜24の両日),Addenbrooke's病院(大学病院)にて行われた。
23日のセッションでは,まずMundt教授と共同研究者(HD)が「メランコリー親和型-経験的知見」と題して,故Tellenbach教授の提唱した概念に関する一連の実証研究を発表した。Mundt教授は,操作的基準の確立や感情表出など家族研究の導入を精力的に試みており,佐藤,中西ら各氏による日本人のデータも,文化間比較の視点をもたらす情報として重視していた。Janzarik教授の後を襲ってMundt教授が主任として就任して以来,Heidelberg学派は従来の記述的現象学的立場から実証的方向へと急展開を見せている。英語論文も増え,英米との情報交換も密になり,閉鎖的なJanzarik時代から大きな変貌を遂げた。その後の私との個人的対話でも,方法論的に厳密な実証研究によって従来の精神病理概念を再検討することの重要性を強調していた。Kraus教授(HD)の発表は「同一性概念とうつ病の同一性療法」と題されていた(一部はすでに活字になっている。Kraus A:Psychotherapy based on identity problems of depressives. Am J Psychotherapy 49:197-212, 1995)。Psychological Medicine誌の編集責任者でもあるPaykel教授(CB)は,うつ病の転帰に関するフォローアップ研究について話した。
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