「精神医学」への手紙
『精神医学』32巻1号掲載の短報「インターフェロン脳症の1症例」について
土井 永史
1
,
安藤 貴紀
1
,
高橋 正
2
,
一宮 洋介
2
,
飯塚 禮二
2
,
秋元 勇治
3
1東京都立松沢病院精神科
2順天堂大学医学部精神医学教室
3式場病院
pp.676-677
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902866
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●Letter
「インターフエロン脳症」との断定は適切か
症例の精神症状とインターフェロン(IFN)との関連をいう前に,なお検討すべき事項があるように思われます。つまり,精神症状は左腎摘除術後に生じたわけですから,BUN,creatinine,アンモニア,電解質,血液ガスの所見の検討は必須です。これらの所見に異常はなかったのでしょうか? 髄液所見についても,圧,細胞数,糖,蛋白は具体的に記載すべきです。また,頸部強直,運動・知覚障害などの神経症状はなかったのでしょうか?
次に,精神症状の変化とIFN投与との時間的関係についての疑問点をいくつか。まず,抑うつ症状は,IFN投与後に増強した可能性があるとはいえ,既にIFN投与前から認められたわけです。したがって,IFN投与後に著明となった症状は,脳波所見に裏づけられるような意識障害だったと考えられます。しかし,その意識障害は,IFN中止後酸素と抗生剤の投与により一旦改善し,その後IFNが投与されていないにもかかわらず再び悪化しています。このことは,むしろIFNの脳への直接的作用以外の要因が本症例の意識障害の原因であった可能性を示唆しているのではないでしょうか? 意識障害と臨床検査所見,すなわち体温,血液ガス,ならびに白血球数,CRP,ESRなどの所見との間に時間的平行関係はなかったでしょうか?
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