書評
—向川原充,金城光代 著—トップジャーナルへの掲載を叶えるケースレポート執筆法
皿谷 健
1
1杏林大・呼吸器内科学
pp.1455
発行日 2023年10月15日
Published Date 2023/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207110
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向川原充,金城光代両先生の執筆による本書は,タイトルの通りトップジャーナルへの掲載を叶えるケースレポート執筆法を述べた書籍である。究極的には「論文を書くこと」を通じて「臨床能力をさらに高めるための本」だと言える。向川原先生が研修を受け,金城先生は現在も診療を行う沖縄県立中部病院には,今に語り継がれる数々のクリニカル・パール(教訓)がある。その多くはcommon diseaseのuncommon presentationを一症例ずつ大切に語り継ぐ土壌があって残るのだろう。本書でも,教訓をストーリーに即して提示する意義が強調されているのは,同院のそうした風土を基に執筆されているからではないか。大学院で「英文でのCase reportの書き方——How much is enough?」と題した講義を毎年行っている評者も,本書の随所に感じられる両先生の症例報告執筆に対する信念に深い共感を持った。
そもそも臨床医が症例報告を書きたい,形に残したいと思うのはなぜか。その理由は,圧倒的な熱量を注いで診療した患者には,患者自身あるいは患者-医師間のストーリーがあり,それを残したいと思うからだ。臨床経過上の困難を教訓として残し,次にその症例に出合った時に遅滞なく解決するためでもある。ストーリーに臨場感のある症例報告は,他施設で同様の困難に直面している医師のプラクティスを変えることに必ずや貢献するだろう。
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